いつだったか自殺企図をしたある患者さんとこんなような話をしました.
(内容は多少変えてあります)
物事のよかった面,喜べる面を見るようにしてごらん.あなたは世の中を悪く見る癖,嫌なところを見る癖がついているんだから,いい面を探すようにしてごらん.たとえば,階段から転がり落ちて足をくじいたときにあなたはどう考える?そこで災難だなぁとかツイてないなぁとか考えてしまうとイライラしたり,嫌な気分になるでしょう.でも,そこでああ大きな怪我しないでよかったなぁ,くじいただけですんでありがたいなぁと思ったら,嫌な気分になることもないんだよ.ちょっと見方を変えるだけで,明るい気の持ち方ができるんだよ.よかったこと探してごらん.
よかったことなんて見つからない,先生は今日はどんなよかったことがあったの?
朝眠かったけど,元気に目が覚めてよかったし,朝ごはんもおいしく食べれてよかったし,事故に遭わないで出勤できてよかったよ.
そんなの当たり前と思ってしまうよ.
今いいこと言ったね.その当たり前だと思っていることの中に実は喜べることがたくさんあるんだよ.五体満足でいられることだって,当たり前のようだけど,世の中には光を失ってこの世界をみることのできない人だっているし,枕元に山のように食べ物を積んでいても,病気でのども通らない人だっているんだよ.あなたは目も見えるし,取りたいものがあれば目で見てそれを手でつかんでとることができるし,食べ物を口に運べばおいしいと感じるでしょう.それはすごくありがたいことなんだよ.だから,当たり前のことの中に喜びがあることを頭に置いておくといいよ.前やってたよかった探しノートに書くのまたやってごらん.
どこまで沁みたかわかりませんが,また患者さんが苦境に置かれたとき,このことを思い出してもらえるといいなぁと思います.隣で話を聞いていた看護師さんが,フォローアップに退院直前にこの話を忘れないようにお話してくれたようです.
病院ではお道の話を神様の名前を出してするわけにはいきませんので,こんな感じでお話しすることがあります.お道の教えの素晴らしさと汎用性に感心するばかりです.前にも書きましたが,心理学でいうと認知行動療法と実存分析に近いですね.
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